水木堂

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『湊町の寅吉』を読んで、商売のあり方、新潟の風俗史を改めて知った話

本日ご紹介する本は

『湊町の寅吉』 藤村沙希作

 

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結論から言うと、この作中の一節で客商売の根本を感じました。

「商は笑なり」

売る側も売れて嬉しい、買う側も欲しいものを得られるので嬉しい、と言うことです。

 

 

あらすじ

主人公の寅吉は8歳でありながら、大きな廻船問屋の長男として日々の礼儀作法を厳しく教えられていました。

この説明だけなら、さぞ優秀で勤勉な子なんだろうと思いますよね。

いえいえ、寅吉、彼は大変ないたずらっ子です。

けちんぼ爺さんで有名でもあり、町の大きな質屋の主人に目を付けられてしまうほどに。

 

ある日、寅吉の家の船が座礁してしまい、父の切り盛りする廻船問屋の商いに陰りが生じてしまいます。

同じくして伏せっていた寅吉の母の容態も悪化し、高価な薬が必要に。

 

しかし、家の商いは不振に陥りかけ高価な薬など手が届きません。

寅吉の父は意を決して、町の質屋である金兵衛のもとにお金を借してもらえるよう頼みに行きます。

そう、寅吉がいたずらを仕掛け、激怒させてしまった金兵衛のもとに・・・。

 

案の定金兵衛はねちっこく快諾せず、そこまで言うならとばかりにある条件を出してきました。

 

『大人の手を借りず、寅吉や子供のみで近く行われる「湊祭り」の舞台で人を笑わせろ』

 

 

この本の魅力

前項で要約したあらすじを記述しましたが、本編では湊町特有の活気、江戸時代の町並みなどがとても良く年少の子にも伝わりやすいよう描かれています。

 

また、私自身が1番に惹かれた理由でもあるのですが、表紙の絵、装丁などがとても可愛らしいのです。

花布やスピンまで表紙の色合わせとよく考えられているようで、本棚の一角に置いておきたい本だと思いました。

 

後書きの終わりには新潟出身の文豪でもある小川未明について、史跡や要点が写真付きでまとめられています。(作者様である藤村さんも新潟出身であり、本作で小川未明文学大賞を受賞されている関係だと思います)

 

 

まとめ

特に印象的だった節は

「商は笑なり」という商売人全ての方に知っていただきたい言葉です。

私自身、接客などの経験もあり、考えさせられるところがありました。

また善行や努力などは誰にも気付かれずとも、必ず自身の生き方に現れるのだということ。

各登場人物、藤村先生が伝えたかったのはそういったことだったのかと読了後感じました。

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